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FIP導入時、買い手のない再エネに「ラストリゾート」

 経済産業省は2019年12月12日、固定価格買取制度(FIT)の抜本的な見直しなどを検討する「再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会」の第5回の会合を開催し、これまでの議論を踏まえた「中間とりまとめ(案)」を公表した。

 

 その中で、電力市場での取引が困難な小規模な再生可能エネルギー事業者が、一時的に買い手がなくなる「オフテイカーリスク」への対策を講じることが盛り込まれた。

 

 FIT後に導入が予定されているフィード・イン・プレミアム(FIP)の運用下では、一般送配電事業者の買取義務がなくなるため、再エネ事業者は、自ら電気の売り先を見つけて売電契約を結ぶ必要がある。ただ、売り先の倒産などで突然、買い手を失った場合、大規模再エネ事業者ならば電力市場を通じて売却できるが、小規模再エネ事業者は、市場取引が可能な出力量に達しないため、売り先のない状態に陥る可能性がある。

 

 そこで、こうした「オフテイカーリスク」対策として、系統運用者などが「ラストリゾート(最後の買い手)」として、買い手のない再エネ電気を引き取る仕組みを設ける。ただ、この際のkWhの価値は「十分に安くして、利用可能期間を設け、自動更新や延長は認めない」(経済産業省)とした。これにより、安易に「ラストリゾート」を活用するインセンティブを減らし、FIP導入の狙いである「市場との統合」を阻害しないとした(図)。

 


図 FIP利用に伴うオフテイカーリスク対策の利用イメージ(出所省:経済産業省)

 

 事務局案では、このうち前者については、一般送配電事業者が系統運用と小売り供給を一体的に行う仕組みを想定し、後者については、新規参入事業者が新たなビジネスモデルとして配電事業を行うイメージを示した。

 

 日本の電力系統では、需要家に電気を送る6.6kⅤ以下の「配電網」と、発電所から配電網に電気を送る6.6kⅤ超の「送電網」は、まとめて一般送配電事業者(旧一般電気事業者)が運用している。しかし、海外では、配電事業と送電事業を異なる事業者が運営しているケースも多い。配電網を所有して地域に電力を販売するドイツのシュタットベルケが代表的だ。

 

 実は、国内でも、電力小売りの全面自由化と固定価格買取制度(FIT)で再生可能エネルギー電源が急増するなか、自治体の出資した地域新電力が数多く設立され、電力小売りに加えて、「配電事業」まで目指そうとする動きがあり、経産省への働きかけもあった。また、国による補助金事業として、災害時に地域の再エネを活用できることを前提としたマイクログリッド実証が進められている。

 

 今回の経産省の案では、災害時に主要系統との接続点を切り離して独立運用するレジリエンス強化を前提に、平時の「配電事業」を認める方向性を示した。法的に裏付けられた免許制(ライセンス制)として、制度的に位置づけるイメージだ。

 

 AIやIoTなど最先端の技術も持つ新規参入者が自治体と組むなど、従来の配電網運用よりも効率化できれば、再エネ活用や「高齢者見守り」など、低コストで付加価値のあるサービスを提供できる可能性もある。ただ、新規参入者による「配電事業」に関しては、既存の配電網を使って収益を上げて再投資せずに撤退してしまうようなケースをいかに防ぐのか、需要家に対する最終保障供給や公平性の確保など、既存の法体系との兼ね合いで整理すべき課題が多い。今後、こうした論点について討議されることになりそうだ。

(日経BP総研クリーンテックラボ)

 


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