澳门威尼克斯人

    築34年の4階建てビルをNearly ZEBに 奥村組技術研究所管理棟(前編)

    建設会社の技術研究所でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の新築や改修に取り組む事例が増えている。奥村組は1986年完成の技術研究所管理棟を改修して「4階建て既存建築物のNearly ZEB化」を果たした。

     

     奥村組技術研究所(茨城県つくば市)の管理棟は、実用に供する国内初の免震建築として1986年9月に完成した。鉄筋コンクリート造の地上4階建て。延べ面積1330m2の建物では、技術系と事務系を合わせて41人が執務している。

     

     同社は20年1月、築34年となるこの建物をNearly ZEBに改修した。19年度に実施した技術研究所全体のリニューアルの一環だ。

     

    奥村組技術研究所の全景。2019年度に一部新設を含む全体改修を行い、ファサードを中心としたデザイン改修、実験機能の向上などを実施した。中央手前が管理棟(写真:三井笑奈/川澄・小林研二写真事務所)

     

    管理棟の南西外観。深いバルコニーを設けた南面と反対側の北面に主な開口を設けている(写真:三井笑奈/川澄・小林研二写真事務所)

     

     ZEBリーディング・オーナー事例として環境共創イニシアチブ(sii)に登録した既存建築物のうち、Nearly ZEB (再生可能エネルギーを含む「一次エネルギー消費量の削減率〈以下、削減率〉」が75%以上)の性能を持つ事例は44件を数える(21年3月26日時点)。ただし、そのほとんどが平屋建てで、4階建て以上はこの管理棟が初めてとなる。

     

     「延べ面積に対して屋根面積が小さい4階建ての既存建築物の場合、普通ならZEB Ready(再生可能エネルギーを除く削減率が50%以上)とするのが良いところだろう。ただし、管理棟はZEBの実証と検証を行い、ショーケースとして当社の技術をアピールする建物だ。ハードルは高いが、Nearly ZEBを実現してほしいと設計部に依頼した。ここで様々な挑戦をし、今後の設計提案に生かしてもらいたい」。奥村組の川井伸泰技術研究所長はそう話す。

     

    改修は「機能面の向上」からスタート

     

     ZEB改修の条件は、「汎用的な技術を採用すること」「省エネだけでなく快適性も確保した空間に仕上げること」だった。具体的には次のような考え方で計画を進めた。

     

     管理棟は、もともと省エネ面でも合理的な建物となっていた。凹凸の少ない箱型の建物は、日射制御に有利な南の方向にほぼ正対している。開口部は南北面に集約され、東西面の外壁は開口部が少なかった。南面にはバルコニーが備わっており、夏の日射を防ぐ効果が見込める。屋上には小規模な太陽光発電設備を既に設置していた。改修前の削減率は49%で、ZEB Readyに手が届くレベルだった。

     

     ただしエレベーターが無くトイレも小さいなど、機能面で現代のニーズに合っていなかった。そこで執務スペースを大幅に刷新すると共に、エレベーターを新設し、トイレを移設拡張した。同時に、給湯設備の能力を増強した。こうした機能面の改修に伴って、建物内で消費するエネルギー量は漸増することになった。

     

    研究者の執務スペース。階高が低いため、天井をはがして空調などの設備を露出させた(写真:三井笑奈/川澄・小林研二写真事務所)

     

    3階の共用スペース。このフロアだけに給湯室を設け、他の階の社員が自然に足を運ぶようにした。部門を超えたコミュニケーションを促す工夫だ(写真:三井笑奈/川澄・小林研二写真事務所)

     

     増えるエネルギー量の対策として、まず設置できる最大限の容量となる32kW分の太陽光発電パネルを屋上に並べた。架台を段状に並べる一般的な設置方法では、影が生じないようパネル間は一定の距離を確保しなければならないため、パネルを一つの大きな平面に並べ、堅固な鉄骨の架台で支える方法とした。

     

    屋上に設置した太陽光発電設備。がっちりと組んだ鉄骨の架台の上に総面積167m2となるパネルを並べた(写真:守山 久子)

     

     それでもNearly ZEBの達成に不足する分は、外皮性能の向上と設備負荷の削減で賄った。外壁は厚さ25mmの既存ウレタンフォーム断熱材に25mmを吹き増し、合計厚さを50mmとした。南北面の開口部は単板ガラスをLow-E複層ガラスのアルミサッシにカバー工法で変更した。

     

     設備面では、空調や照明に高効率の設備を導入した。照明にはタスク&アンビエント方式を採用している。アンビエント照明の机上照度は300ルクスとギリギリまで抑え、タスク照明を750ルクスに設定した。

     

     この他、3階の開口部の上部には自動制御で開閉する自然換気口を設けた。建物内外に設けた計測器で外気の温度や湿度、風速、雨量などを常時観測し、室内に比べて外部の条件が良くなる時間帯には自動で換気口が開く仕組みだ。

     

     これらの仕様を積み重ね、再生可能エネルギーを含む削減率を76%まで高めていった(再生可能エネルギーを含まない場合の削減率は55%)。

     

    ZEB改修に導入した技術(資料:奥村組)

     

    3階に設けた自然換気口。外気の条件が良い時に自動で開く(写真:守山 久子)

     

    ZEB改修における外皮や設備の仕様は、既存の建築物が持つ特徴や制約を踏まえて決定した。

     

     日本建築センターで受けた免震構造の評定を保持するには、改修に伴う建物重量の増減を一定範囲に抑える必要がある。太陽光発電設備の設置によってパネルと架台の重量が増えるので、どこかで調整しなければならなかった。ここではエレベーターの新設に伴う梁の撤去や屋上緑化の撤去による重量の減少分と相殺させることで、建物重量の変化を一定範囲内に収めた。

     

     南面のバルコニーも、設計方針を左右する存在だった。外皮性能の検討時には外断熱する方法も視野に入れたが、バルコニー部分に生じる熱橋が弱点になる。バルコニー全体を断熱材でくるむ案やバルコニー部分に内断熱を付加する案も検証した上で、汎用性が高く費用対効果が良い内断熱の厚みを吹き増す方法を採用した。

     

     改修後は、室内の温湿度などをはじめとする計測を継続しつつ、快適性などに関する利用者アンケートを実施している。黒を基調とした2階の執務スペースは暗く感じがちだという声を受けて、アンビエント照明の設定を明るくする調整を施した。一方で、改修後の建物では冬の暖かさや音の静かさを評価する声も出ている。20年度の実測によると、設計値では76%だった削減率が84%まで向上するなど順調な成果を得ている。

     

    改修内容と「一次エネルギー消費率/創エネルギー量」の関係(資料:奥村組)

     

    一次エネルギー消費量の比較(資料:奥村組)

     

     

    建築概要

    奥村組技術研究所管理棟

     

    所在地:茨城県つくば市

    地域区分:5地域

    建物用途:事務所等

    構造・階数:鉄筋コンクリート造(免震構造)・地上4階建て

    延べ面積:1330m2

    発注者:奥村組

    設計・施工者:奥村組

    完成:2020年1月(改修)

     

     

    (日経クロステック「省エネNext」公開のウェブ記事から抜粋)

     


    これからの時代は企業として省エネ、創エネ、畜エネへの取り組みが求められます。グローバルのトップ企業トリナ・ソーラーの高品質で高パフォーマンスの製品の中から最適なパネルをお選びください。

         

        関連コンテンツ

    ブログTOPはこちら 製品一覧はこちら
    お問い合わせフォーム

    関連する記事

    友情链接: