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経産省、「配電事業」の解禁を検討

 経済産業省は2019年11月8日、総合資源エネルギー調査会・持続可能な電力システム構築小委員会の第1回会合を開催し、電力システムのレジリエンス強化に向けた論点を整理した。そのなかで、系統の独立運営の選択肢として「配電事業」を認める案を示した。

 

 事務局(経産省)は、レジリエンスを高める「独立系統化」として、2つのパターンを示した。1つ目は、山間地などでの「遠隔分散型グリッド」で、主要系統につながる送配電線を撤去し、平時から独立系統として運用するパターンである(図)。2つ目は、特定の区域において、一般送配電事業者の送配電網を活用して、平時には「配電事業」を行い、災害時には、主要系統との接続点を切り離して独立して運用するパターンだ。

 


図 「遠隔分散型グリッド」のイメージ(出所:経済産業省)

 

 事務局案では、このうち前者については、一般送配電事業者が系統運用と小売り供給を一体的に行う仕組みを想定し、後者については、新規参入事業者が新たなビジネスモデルとして配電事業を行うイメージを示した。

 

 日本の電力系統では、需要家に電気を送る6.6kⅤ以下の「配電網」と、発電所から配電網に電気を送る6.6kⅤ超の「送電網」は、まとめて一般送配電事業者(旧一般電気事業者)が運用している。しかし、海外では、配電事業と送電事業を異なる事業者が運営しているケースも多い。配電網を所有して地域に電力を販売するドイツのシュタットベルケが代表的だ。

 

 実は、国内でも、電力小売りの全面自由化と固定価格買取制度(FIT)で再生可能エネルギー電源が急増するなか、自治体の出資した地域新電力が数多く設立され、電力小売りに加えて、「配電事業」まで目指そうとする動きがあり、経産省への働きかけもあった。また、国による補助金事業として、災害時に地域の再エネを活用できることを前提としたマイクログリッド実証が進められている。

 

 今回の経産省の案では、災害時に主要系統との接続点を切り離して独立運用するレジリエンス強化を前提に、平時の「配電事業」を認める方向性を示した。法的に裏付けられた免許制(ライセンス制)として、制度的に位置づけるイメージだ。

 

 AIやIoTなど最先端の技術も持つ新規参入者が自治体と組むなど、従来の配電網運用よりも効率化できれば、再エネ活用や「高齢者見守り」など、低コストで付加価値のあるサービスを提供できる可能性もある。ただ、新規参入者による「配電事業」に関しては、既存の配電網を使って収益を上げて再投資せずに撤退してしまうようなケースをいかに防ぐのか、需要家に対する最終保障供給や公平性の確保など、既存の法体系との兼ね合いで整理すべき課題が多い。今後、こうした論点について討議されることになりそうだ。
(日経BP総研クリーンテックラボ)

 


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